2016年9月1日

データベースとアクセシビリティ

Webシステムの開発やアクセシビリティ評価を行っていると、よく問題になってくるのがデータベースです。多くの場合、アクセシビリティの評価はある程度システムが出来上がってから行われます。システムやデータベースの設計、実装はもう終わっている。そして、それに手を入れるのは難しい段階になっています。

パターン1

「この画像の代替テキスト『画像1』『画像2』はあんまりです、何とかなりませんか?」
「画像をDBで管理しているし、登録するシステムにも代替テキストを入れる項目がないので大改修になるんですよね」

パターン2

「この画像の代替テキストありません、何とかなりませんか?」
「このシステムは XXX というプラットフォーム上で作ってるのですけど、XXX にはそんな機能がないので、プラットフォームを直さねばならないです。そんなことできません。」

というようなこと。さらに言うと、「長い説明」が必要な画像でもあったら、さらに困難になります。

このような問題は、システムを設計するときにあらかじめ代替テキストについて考えていない、あるいは、開発のプラットフォームを選択するときにアクセシビリティへの対応具合を確認していない、というのが原因です。よく言われることですが、「アクセシビリティは企画段階から対応すべし」という原則を守らないことが、システム開発の最後の段階で響いてきて、開発の手戻り、コストを増大させる典型的な例でしょう。HTMLを修正すれば済む話ならば頑張ればできるのでしょうが、システムの変更となるとデバッグや機能試験などの工数も増える一方です。開発者の視点で見れば、できれば今からシステムを変更したくないというのは当然のことでしょう。納期も心配です。DBを変更するとなると簡単ではありません。代替テキストを保持できるフィールドを追加するだけで済む、というのは運の良いほうです。さまざまなコードに影響を及ぼして、別の場所に新たなバグを発生させてしまうということも十分にある話。

さて、そのような問題を解決するためにはどうすればいいのでしょうか。


  1. システムがオリジナルの設計である場合、画像、動画、音声をDBで管理するときは、代替テキストやタイトルをつけられるようにDBを設計しておく。また、登録、管理画面で入力できるようにしておく。
  2. プラットフォームを使う場合、そのプラットフォームがアクセシビリティに対応しているか確認しておく、場合によってはテストしておく。

というのが、その解決策です。プラットフォームを使うというのは現在のWebシステム開発では当然でしょうから、プラットフォームがどこまで対応できるかを見定めておくことが必要になります。

DBと関係しないところでも、プラットフォームが用意しているテンプレートやJavaScriptが悪さをすることも多いです。例えば、マウスでドラッグ&ドロップしないと使えない、画面サイズを変更的できない、というのはよく経験することです。

プラットフォームにアクセシビリティ対応を追加するとなると、プラットフォームに手を入れることになります。しかし、そうするとプラットフォームのバージョンアップ時にまた変更とテストの工数がかかることになることを頭に入れておきましょう。

2014年12月25日

WCAG 2.0 と Webシステム

昨日のWeb Accessibility Advent Calendar 2014-12月22日記事で SawadaStdDesign さんが、素晴らしい?ブルースを歌われたので、David の WCAG 2.0 Theme Song に合わせて踊った映像を披露します。

ええ、嘘です。でも、WCAG 2.0 = JIS X8341-3:201X についてもう一度考えたいと思うのです。

HTML 5.0 が今年の10月に勧告になりました。CSSのレベル3モジュールも勧告化こそまちまちですが、ブラウザの実装はどんどん進んで、あまり気にしないで使っている人が多いことでしょう。Webテクノロジーの進化スピードの速さには目が回ります。

(目が回ったので、お茶淹れて休憩しました)

(休憩した後通常に仕事に戻ってしまい、この続きを25日に書いています。2日遅れになってしまいました。)

続けます。

ええと、WCAG 2.0 の最大の特徴はなにか?と聞かれたらこう答えます。

「WCAG 2.0 は技術非依存です。人間の特性、つまりは障害や高齢者の特性から書いてありますから、ある程度は技術に即してはいますが、それでも長く使えるガイドラインなんですよ。抽象的になってるってことです。難しい?ええ、みなまで言わないでください。そのために、コンサルタントって商売があるわけで・・・・」

たしかに、技術に依存しないということは大事です。だから、「alt 属性」ではなく「代替テキスト」、「動画と音声メディア」ではなく「時間の経過に伴って変化するメディア」、「h1-6、table、label」ではなく「情報及び関係性」、title要素ではなく「ページタイトル」・・・というわけです。この書き方は美しい、というか苦肉の策でありました。実際、WCAG 2.0 の後に、HTML 5.0 が勧告されましたが、WCAG 2.0 はびくともしません。HTML に依存しないからです。

Web技術の取捨選択と進歩が市場と実装で進んでいくのに対して、アクセシビリティは社会の合意で進んでいきます。合意を作るには多くの時間を要しますし、Web技術の進化に合わせて変えていくのは現実的ではない。だから、こういう風に WCAG 2.0 を作るしかなかったのだと思うのです。誰かの思いつきでこうなったのではなく、周到に考えられて今があるというわけです。それに、堅牢なガイドラインがあれば公共や企業はそれを採用して仕事ができますし、ビジネスも広がります。WCAG 2.0 の中心を担っていた人たちの仕事ぶりを垣間見た立場からしても、その忍耐力は頭が下がるものでした。世界中からくるコメントにすべて答えて、解決していったのですから。

さあ、確かにこれは仕方がなかった。でも、WCAG 2.0 の想定を超えるほどにWebは進化しているという気がします。

というのも、Webは急速にアプリケーションに近付いている。通常のWebサイトでさえ、jQuery や Bootstrap や、場合によっては AngularJS なんかも入り始めている。そんな状態で、WCAG 2.0 は持ちこたえられるのでしょうか。

たとえば URL がほとんど1つしかないような Web サイトのようなシステム、あるいはURLのパラメータやログインによる状態遷移で複雑に表情を変えるようなWebで、今のようなガイドラインをうまく適用できるのでしょうか。WCAG 2.0 にはひとつだけ、このような操作の流れを意識した記述があります。"Conformance Requirements (適合要件)" という項に書いてあります。
3. 一連のプロセス: ウェブページがプロセスを提示する一連の流れのウェブページ群(つまり、利用者がある目的を達成するために完了させる必要のある一連の手順)に含まれる場合、そのプロセス中のすべてのウェブページが指定したレベル又はそれ以上のレベルで適合している(もし、プロセス中のウェブページが特定のレベル又はそれ以上のレベルに適合していない場合、そのレベルに適合できない)。

ここが、今どんどん広がっている。ページという単位でものを考えることができなくなってきています。どこを切り取っても、一連のプロセスがある。そして、プロセス全体で評価するとなると、もはやチェッカーのようなものは評価作業のごく一部でしかなくなってしまっているのです。これは、僕の仕事の悩みでもあります。

この問題への答えを僕は持っていますが、書きません。これからの Web アクセシビリティがどう進むべきか、考えてみてほしいから。

2014年4月13日

アクセシブルなWeb制作者チェックリスト

このチェックリストは、Webアクセシビリティを実装する人がアクセシビリティを正しく理解しているかどうかを判定するためのチェックリスト試案です。これだけのことにYesと言えるかどうかで、Webアクセシビリティのかなりの部分をカバーできるのではと思うのですが、どうでしょうか。

共通


  • 1. Web標準を理解している。
  • 2. セマンティックな HTML の記述法方法を理解している。
  • 3. 情報の構造をHTMLで、「見た目」のデザインをCSSで記述し、分離する方法を理解している。
  • 4. 画像などの非テキストコンテンツがスクリーンリーダでどのように扱われるかを理解している。
  • 5. キーボードだけでWebページをナビゲーションする方法を理解している。
  • 6. フォームの要素とラベルの関連付けを理解している。
  • 7. スクリーンリーダでWebサイトを利用する方法を理解している。
  • 8. フォーカスを理解している。
  • 9. レイアウトテーブルとデータテーブルの違い、扱い方を理解している。
  • 10. 色のコントラスト比を確認する方法を理解している。

JavaScriptを利用する場合


  • 11. DOMを理解している。

該当するコンテンツがある場合


  • 12. 点滅や動きのあるコンテンツに対する対処方法を理解している。
  • 13. 動画や音声に対するアクセシビリティの要求を理解している。
  • 14. 光過敏性発作の危険性を理解している。


2014年3月17日

アクセシビリティ・サポーテッドの功罪

WCAG2.0とJIS X8341-3:2010 で Web アクセシビリティを考える上で重要な考え方として、アクセシビリティ・サポーテッド(accessibility-supported) という概念が導入されています。これは、噛み砕いて言うと次のような考え方です。

「Webアクセシビリティを実現するためには様々な方法がある。しかし、それを支援技術がサポートしてないと意味がないし利用可能にならない。だから、支援技術がサポートしている技術を使ってやりなさい」

これは、障害のある人が実際にWebを使ううえではとても重要な考え方です。つまり、技術のことだけを見ているのではなくて、実際のユーザの現状を把握しておかないと意味がないということです。そのため、Webアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)では、アクセシビリティ・サポーテッド(AS)情報  というのを支援技術やブラウザを使って丁寧に調べて、それを公開しています。素晴らしい仕事だと思います。

ただ、実際にそれを見てみるとどうでしょう。7.1.1.1 非テキストコンテンツに関する達成基準 (等級A) を見ても、「要注意」や「達成不可能」が並んでいます。JIS や WCAG の詳細なドキュメントを読んで調べても、結局使える方法は限られてくるというのがわかるでしょう。たとえば、table 要素の見出しセルとデータセルの関連付けを見ても、スクリーンリーダの対応はまちまちで、古いバージョンだとほとんど利用できない。form だって label で関連付けても読まないスクリーンリーダを使っている方が、まだまだいるのだろうと思えるのです。

JIS X8341-4:2010 の試験をやってみると、ここが大きなネックになってきます。人によって見方が違って意見が合わないということもよくあります。私自身も、「厳し目に見る」時と「やや甘めに見る」というさじ加減が存在します。対応するクリーンリーダーを JAWS や NVDA だけにすれば楽になるのですが、そういうわけにもいかないジレンマに陥ってしまうのです。

アクセシビリティ・サポーテッドは障害者がWebにアクセスする権利を何とか守ろうとして編み出された考え方です。しかし一方で、実際にWebを作ろうとすると、何が正解か、ということについて大きな悩みも生み出しているのです。

もしこの概念がなく、支援技術のサポートの有無と関係なく技術的な側面だけで決めたとしたらどうでしょうか?使えない人が確かに出てくるでしょう。しかし、Web制作でやるべきことは極めて明確になり、それをサポートしないのは支援技術のバグであると言うこともできます。たとえば、labelの関連づけなどは、読まないスクリーンリーダのほうが悪いと言ってしまってもいいはずです。

このように、アクセシビリティの基準には「今最低限やるべきだし、技術的に明確でやればできるはず」のレベルと「こういう仕組みを取り入れて支援技術のサポートが広がるともっと使いやすくなる」という2つの側面が共存してグレーゾーンを作ってしまっているのです。

今日的な課題として、さらにWebアクセシビリティを進めるためには、HTMLにおけるアクセシビリティはこうあるべしという姿を技術的に明確な形にすることが、望まれているのではないかと思うのです。「支援技術がサポートすべきことはこういうことである」ということも明確にすべきです。支援技術の遅れのツケをコンテンツが引き受け続け、過去の「遺産」との互換性にばかり目をとらわれていると、Web技術の果てしない進歩にとてもじゃないけれど追い付かない。

Webアクセシビリティを純粋に技術的でこうあるべしという未来的なモデルと、現実に対応する現実モデルに分離して考えることが必要です。そして、その未来モデルに向かって支援技術とコンテンツが両輪になって進んでいく道を示すべきです。



2013年12月11日

35年前の感触と背中とアクセシビリティ

僕は52歳になりました。

今日が誕生日。家族が寝静まって仕事も終わりにして、カレンダーに穴を開けてひとりサイダー飲んで祝ってます。

そうか。あれから、もう35年も経ったのですね。

ずっと、アクセシビリティに関わる仕事ばかりしてきました。なぜそこに興味をもったのか、なぜアクセシビリティをやっているのかと聞いてくださる人はあまりいません。もしかしたら、猫背の真ん中に僕には見えない文字で「アクセシビリティ!このやろ!まじめにやらんかい!」などと書いてあって、そのインパクトが強すぎて聞こうと思われないのでしょうか。

うちのかみさんは「あなたはいつもしかめっ面で怖いオーラ出してるから声かけづらいんじゃないの?」といいますが、あなたのほうがよっぽど怖い、とは、口が裂けても言えません。


(これ、かみさんが読まないことをみんなで祈ってください)


京都のいなかの高校に通っていたころです。近くに有名な「与謝の海養護学校」という学校がありました。そこで開催される「交流会」のような催しに参加することになりました。そのあとの出来事が衝撃的で、実はほとんど記憶が飛んでいるのですが、いろいろな学校の合唱があったり、もしかすると吹奏楽の演奏もあったかもしれません。手品はなかったと思います。

ひととおり体育館での催しが終わった後、グランドに出て生徒同士の交流が始まりました。

すると、ひとりの養護学校の先生が、

「はい、あなたはこの子としっかり手をつないでてね」

と言って、ひとりの女の子と手をつながされ、その先生はさっさとどこかに行ってしまいました。

彼女は、重い知的障害のある、でっぷりと太った生徒でした。まったく表情がない。動こうともしない。鼻水垂らしながら僕の右手をしっかり握って、まるでぶら下がっているようでした。手を離さないようにと言われた手前、暑い季節じゃなかったのに、額に汗して「しっかり握っていよう」とだけ思っていました。しかし、17歳の未知体験です。障害の重いその子は少し怖い感じもするし、掌も汗びっしょり。つないだ手から少し鼓動のようなものを感じて、生きている「人」であるということは実感しますが、意思の疎通は全くなし。まるで暖かい石にくくりつけられたような、長くて気の遠くなるような時間でした。

そのあと、どうやってそれが終わって、どんなふうに家まで帰ったのか。全く覚えていません。それほど、あのころの僕には衝撃のできごとでした。でもどうしたことでしょうか。それからというもの、「障害」という文字が目に入ってくるし、ニュースにも敏感になっていきました。社会のありように目を開いていく青葉の季節だったのでしょう。障害のある人と出会ってしっかりと存在を意識した初体験です。

こんなできごとが、僕にとって障害を考える原体験になっています。10代の若さで理屈ではなく感じたこと、感触、温度、そういったものが僕を形づくり、そして35年後に向かってグイっと背中を押したのだと思うのです。

アクセシビリティを語るときに、技術の課題として議論してすませてしまうことが増えています。私自身がそうなっています。だけど、生きている人がいてくらしを営んで、そして、困っていたり苦しんでいたりするということ。ニンゲンが生きるということに直接かかわっているのだということ。そのことを、あの感触を、あの汗を忘れないようにしたいと思うのです。それが、アクセシビリティという技術が解決し、実現しようとしていることだからです。

実はもうひとつ、若かりしころの衝撃体験があります。それについてはどこかの飲み会ででも聞いてください。

そして最後に念を押しておきますが、決して僕のかみさんにはこの記事教えないでくださいね。


これは、Web Accessibility Advent Calendar 2013 のために書きました。

2013年9月7日

アクセシビリティってどゆこと?

”Accessibility: What does it all mean?” (アクセシビリティってどゆこと?)

Abilitynet のこの動画、すごくかっこいいだけでなくて、アクセシビリティをうまく表現してる。

2013年9月1日

くじ引きの時間

くじ引きのイラスト
さあ、商店街の大売り出し、くじ引きの時間です。

1000枚の三角くじが箱に入っています。当たりは50枚入っていて、残りの950枚は外れです。たくさんいろんなものを買ってくじ引き券を40枚もらったので、40回のくじ引きができるとします。

しかし、しかし、なんと40回もくじ引きできたのに、1度も当たりませんでした。何ということでしょう!あまりに悔しいので1枚も当たらない確率を計算してみましょう。

まず1000枚のくじがありますので、そこから40枚のくじを選ぶ組み合わせの数は、1000C40 です。次に、外ればかり引く組み合わせはというと、950C40 です。

この2つの数を割り算すると、0.12 になりました。1000枚中に当たりが50枚ある時には、40回引いても1回も当たらないなんてことが12%の確率で起きるものなのです。残りの88%の確率では当たりを1枚以上引くはずです。


この計算、1000ページのウェブサイトにJIS X 8341-3:2010 を満たさないページが 50 ページあると仮定して、そのサイトの中から 40 ページをランダムにサンプリングしたときに、問題のあるページをひとつも発見できずに間違って「準拠」としてしまう確率と同じ計算なんです。

40ページサンプリングすれば、5%の問題ページを見過ごす確率は 10% 強

60ページサンプリングだと、同じ条件で問題を見過ごす確率は 4% です。このくらいの確率なら、そこそこいい線いってる気がしませんか?もちろん全ページチェックすれば問題を見過ごす可能性は0%になります。(実際には、チェックする人が見落とす可能性もあるのでゼロにはなりません)

40ページってそういうことらしいです。

2013年8月26日

JIS X 8341-3:2010 「第三者によるコンテンツ」とは何か?

WCAG2.0 には、「部分適合に関する記述 - 第三者によるコンテンツ」、JIS X8341-3:2010 には、「8.1.3 第三者によるコンテンツにおける例外」という概念がある。注意深く読めば、JIS X8341-3:2010 の該当個所は、WCAG2.0 の箇所と同じであることはすぐわかる。細かい言い回しは JIS 流儀になっているものの、考え方は同じである。WCAG2.0では「部分適合」が可能であるという説明になっているのに対して、JISでは試験方法で説明されており、これは試験を行う時に第三者のコンテンツを例外的に除外してよいと言っているだけである。もちろん、除外してよいと書いてあるのだから試験結果がOKなら、該当する達成基準を満たしていると言ってもよいわけだ。

たとえば掲示板のようなシステムを作るとしよう。その掲示板システムはWebサイトを公開した時点では記事は投稿されていない。そこに絵文字のような記事が書かれるかもしれないし、アスタリスクを用いてテキストで棒グラフを書く人もあらわれるかもしれない。Webメールのようなシステムでも、どんなメールが届くかわからないのだから、対応のしようがないし、こういったシステムでコンテンツの内部にまでアクセシビリティを保証するのは無理だ。現実的ではない。

WCAG2.0やJIS X8341-3:2010 が想定していたのはこのようなシーンだった。しかし、Webはマッシュアップの時代になった。第三者のコンテンツばかりで構成されたWebサイトはもはや珍しくない。そんな時代にこの概念をどう理解すべきであろうか?

マッシュアップで何かのコードをWebに埋め込む場合、そこにはコンテンツが含まれると同時にUIも含まれる。たとえば、Youtube のビデオをページに組み込めば、ビデオそのものだけだはなく、Youtubeのビデオを再生し操作するためのUIも組み込まれることになる。ここで問題になるのが、UI、そしてビデオ本体が第三者コンテンツとして例外扱いできるかどうかだ。

Youtube の コンテンツとUIを説明する図



思い出してもらいたいのだけれど、WCAG2.0やJIS X8341-3:2010 には例外扱いする方法が記されている。1つ目はこれだ。

a) 試験は,分かる範囲で実施することができる。第三者によるコンテンツが監視されていて,2 営業日以内に修正される(適合していないコンテンツが削除されるか,適合するように修正される。)場合には,その第三者によるコンテンツにおいて問題があったとしても,そのウェブページは適合しているとみなすことができる。ただし,適合していないコンテンツを監視・修正できない場合には,適合しているとはいえない。

これは、第三者コンテンツを監視して2営業日以内に修正することを求めている。この対応が本来求められるスタイルだろうけれど、容易ではないというのは明らかだ。いきおい、2つ目の方法に進むことになる。

b) 特定された部分を除外して試験を行ってもよい。そのような場合,8.3 に従って,“ウェブページ全体としては試験していないが,次の第三者によるコンテンツを除いてアクセシビリティ達成等級X で試験を行った。”というような例外事項の記述を行うことができる。ただし,このような例外が認められるのは,次のすべての条件を満たす場合に限る。
1) コンテンツ制作者が監視・修正できるコンテンツではない。
2) 利用者が識別できるように,例外を適用する箇所が明確に説明されている。

こちらはどうか。2) の識別できるようにするというのは、該当するページで箇所を明確に説明しておけばいいだけだから問題はないだろう。問題は、「コンテンツ制作者が監視・修正できるコンテンツではない」といえるかどうかだ。

まず、コンテンツの問題。

たとえば、全く知らない人が作成したビデオをWebページに掲載する場合には、それは第三者のコンテンツであると言える。しかし、それは固定されたある特定のビデオであり、そのビデオがWCAGやJISを満たすかどうかは検証(試験)可能である。したがって、このような場合には第三者の例外は当てはまらない。一方、キーワードを用いてランダムにビデオが再生されるシステムならどうだろう。これは、何が起こるか予測不可能で第三者の例外にするのがふさわしい。もちろん、自分で作成してYoutubにアップロードしたビデオは第三者ですらない。

次に、UIの問題だ。たとえば、Youtubeのビデオを再生するUIがWCAGやJISを満たさないと仮定しよう。確かに、UIのコードは第三者から与えられたものである。しかし、それは検証(試験)可能だから除外する理由にはならないと考えるべきだろう。Youtubeを再生する別のソリューションを利用することも可能だし、新たに開発して提供することさえ技術的には可能だからだ。選択肢がないわけではない。

JIS X8341-3:2010 の「8.1.3 第三者によるコンテンツにおける例外」とは、一言でいえば「第三者が提供するために試験できない、あるいは試験しても変化してしまう」コンテンツを試験の対象から外してもよいと言っているだけである。今だったら、「第三者のコンテンツなのでどうなるかわからないし試験もできない場合の例外」とでもタイトルをつけたに違いない内容だ。

どうも最近、「第三者のものは除外できる」という誤った理解が進んでいる気がする。たとえば、あるサイトには次のような記述がある(名誉のために、あえて伏す)

JIS X 8341-3 8.1.3(第三者によるコンテンツにおける例外)
  • 修正用データが無いコンテンツ
  • 添付ファイル(PDFファイル等の添付ファイルに関しては運用の事情により等級Aを満たすことに努めることとする)
  • Googleマップを使用しているページ

これらはどれも試験の例外にはそぐわない。

もちろん、当面の策としてそういったややこしいページを除外して 取り組みやすいところからJIS X8341-3:2010 対応を始めるということは現実的な選択で、それを責めるつもりはない。けれど、「第三者によるコンテンツにおける例外」は本来、試験結果に付すべきものであって、ここで例示したようなものは、JIS X8341-3:2010 「6.1 企画」で述べられたウェブアクセシビリティ方針に属することではないかと思う。


2013年6月28日

ウェブアクセシビリティの重要性(東洋大学教授 山田 肇氏)ビデオ公開

ウェブアクセシビリティセミナー「障害者基本計画と情報アクセシビリティの今後」(2013年5月30日(木) 東洋大学 大手町サテライト)ウェブアクセシビリティ推進協会のビデオを Youtube で公開しました。

開催のご挨拶:ウェブアクセシビリティの重要性
ウェブアクセシビリティ推進協会理事長
東洋大学教授 山田 肇氏



まだ字幕がありません。amaraを使って半分くらいまで字幕を作っていますので、もし手伝ってくださる方がいましたらぜひお願いします。勝手に続きをやってくださってもかまいません。Google+などで、ご一報ください。

http://amara.org/v/C0Zn/

2013年5月24日

Kindle for iOS Accessibility Gestures

Kindle for iOS Accessibility Gestures - Quick Reference Guide というKindle版の電子書籍がタダで Amazonから買えるようになっています。中身は VoiceOver での Kindle アプリの使い方です。日本語版もあるといいな。だれか出しませんか?

 

2013年5月17日

Webアクセシビリティチェッカーの現状


W3CにWebアクセシビリティチェッカーの一覧ページがあるので、久しぶりに覗いてみたがどうも更新されている気配がありません。そこで、リストの中から有名どころを抜き出して、現状がどうなっているか調べてみることにしました。(ただし、色チェッカー、文法チェッカー、日本のものは除く)
Complete List of Web Accessibility Evaluation Tools
http://www.w3.org/WAI/RC/tools/complete

2013年5月7日

Of Mice and Men

Of Mice and Men(二十日鼠と人間)は、1937年のジョン・スタインベックの小説です。僕は、10年ほど前にレンタルビデオではじめて見て、そして原作も買って読みました。この物語には、障害ということを考えさせる側面がありますが、もっと多くの社会の抱える問題を含んでいるし、人間のこころのありようを鋭く切り取る物語です。そして、大自然の美しさと生きることの厳しさに圧倒されます。

原作の英語は、なまりを活かした文章であることに慣れればとても読みやすく、短いので読み切ることができます。

映画には1939年制作の古い作品もあるようですが、僕が見たのは1992年のあのジョン・マルコヴィッチが大男のレニーを演じている新しいほう。正直いって、決して楽しい作品ではないけれど、見る価値のある映画だと思います。これほど何度も見た映画はありません。

ストーリーを語ってしまうとつまらなくなるので書きませんが、僕の見方をひとつだけ紹介すると、主人公である二人の男、ジョージとレニーは、まるでひとりの人間の中にあるもののように感じました。自分の中にジョージとレニーが生きているかのようです。

古い映画ですので見た方も多いと思いますが、おすすめです。でも、元気な時に見たほうがいいです。

2013年4月7日

障害者権利条約の「合理的配慮」とは何だったか


報道によると、「障害者差別解消法」について自民、公明、民主が三党合意し、民間における配慮を努力義務にとどめるということになったということだ。この法律は、国連の障害者権利条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)を批准するために整備がすすめられた法律である。もとはといえば、障害者権利条約は障害者の差別をなくすことがその本旨である。差別をなくすことが努力目標であってよいはずがない。

2013年3月31日

amara で YouTube に字幕をつけてみた

amara を使って YouTube の「第3回 アクセシビリティキャンプ東京 ショートセッション (1)」に字幕をつけてみました。操作に慣れるのに少し時間がかかりましたが、10分のビデオで作業は1時間くらい。聞きとれないところなどを飛ばしているし、キータイピングが遅いので、丁寧にやればもう少し時間がかかるかもしれません。

操作画面はこんな感じで、TABキーでビデオの再生と停止、Shift+TABで少し巻き戻しする仕様です。全部入力できたら、今度は音声との同期を調整します。で確認しておわり。とても使いやすい。

amara の字幕作成画面
amara 操作画面

2013年3月30日

YouTube の caption の見やすさ

今朝、YouTube Developers Live: Captioning with Amara (GoogleDevelopers) を見ていたら、FirefoxとChromeで字幕の表示が違うのに気が付きました。



FirefoxとChromeの字幕表現の違い

Firefox は黒背景に白字なのに対して、Chromeは抜き文字で明らかに見辛い。同じ Youtube でもこんなふうに表示が違っていることに気がついて驚きました。

実は、これはデフォルト設定。字幕の設定画面を開くと、色を変えたり、文字を拡大できます。でも、設定画面もやっぱり Firefox と Chrome でちがう。なんででしょう?

Firefoxの字幕設定
Firefoxの字幕設定

Chromeの字幕設定
Chromeの字幕設定


2013年3月18日

オープンデータとアクセシビリティ

Wordle, telling it nicely, by suzannelong on Flickr, CC BY-NC-SA 2.0
クラウドが普及して、さまざまなWebサービスが連携しAPIを介して協調して動くようになった。APIで扱われるデータの多くは、JSONだったりXMLだったりするが、それらはセマンティックに味付けされたものになり、コンピュータで自由に加工できる、新鮮で、滋味あふれる原材料になった。

HTMLで何でも処理していた時代には、3/18 と書かれているのが3月18日なのかそれとも18分の3なのかわからなかったけれど、APIで意味付けされたデータなら、たとえそれが "3/18" という文字列であっても、処理は容易だ。スクリーンリーダーが解釈しようと頑張ったのに、間違って「18分の3」と読み上げることもない。

2013年3月9日

JIS X8341-3:2010 試験の意味を考える

民間にもポリシーを求める各国の動き

アダム・ゴーリー(Adam Gorley)さんのブログで「迫りくるアクセシビリティポリシーの整備期限(Deadline to prepare accessibility policies approaching)」という記事を読みました。カナダのオンタリオ州では、民間団体・企業でも50人以上の従業員がいるところでは、Accessibility for Ontarians with Disabilities Act (オンタリオ障害者のアクセシビリティ法)で、アクセシビリティへの取り組みが求められており、2014年1月までにポリシーを公開しなければならないのだとか。当然ながら、ポリシーにはどのようにアクセシブルなWebにしているか、しようとしているかを明記することになるのでしょう。

2013年3月8日

新エネループのデザイン


パナソニックに統合された新エネループのデザインがダサいとTwitterなどで騒ぎになっている。

たしかにデザインは工夫がないものだけれど、私みたいな武骨ものは、性能がどうなっていて、値段が高くなるのか安くなるのかにしか興味がないので、理解しがたい騒ぎである。電池など脇役に過ぎずデザインなんか気にしたことさえないからだ。

しかしよく考えてみると、この騒ぎは電池のような単純なモノの意匠デザインでさえユーザの心を躍らせ、買わせる力があるのだということ示している。ただ充電して使うだけのモノのパッケージデザインが、である。ましてや、実際に使用性にかかわるデザイン要素、たとえばつまみの形や表示画面の美しさなどにおいては、ユーザはこれ以上の反応をするということだ。使い勝手や性能だけで商品を選ぶ人は多数派でないということだろう。

しかし、この騒ぎを通じてエネループの新デザインはユーザに定着しただろうから、ブランディングとしては結果オーライなのかもしれない。

話はここまでなのだが、全盲の人って乾電池とエネループみたいな充電池をどうやって識別してるのだろう。間違って乾電池を充電したりしないんだろうか?充電器のほうでちゃんとわかるようになっているのだろうか?満充電でお知らせするビープ音は鳴るのだろうか?そういう意味でのデザインにも、少し気配りしてくれればありがたいと思う。




2013年2月24日

iPhone 4S を VoiceOver で使う


iPhone 4S を音声で使用しているTommy Edisonさんの動画です。
英語ですが、字幕も出ますし映像を見ていれば分かってくると思います。

参考まで。

How Blind People Use The iPhone 4S (1 of 2)



How Blind People Use The iPhone 4S (2 of 2)



2013年2月22日

アクセシビリティハンドブック


オライリージャパンから The Accessibility Handbook: Making 508 Websites for Everyone By Katie Cunningham の翻訳「アクセシビリティハンドブック」が出ています。米国リハ法508条を踏まえたものですが、アクセシビリティの入門書としては役立ちそうです。探してみましたが、日本語版は電子書籍のみのようです。